あなたの夢は、叶いました。
「叶えたい未来」を設定し、何年もコツコツと努力して、ついに憧れが現実となる日々がやってきたのです。
でも、最高に嬉しいはずなのに、なぜか心にぽっかりと穴が空いたように感じてしまう。なんなら、虚しさや疲労感すら感じる……
人によっては、夢が叶った後にこのような状態になることがあります。
実は脳と意識の仕組みから見ると、夢が叶った後をどう過ごすかで、その先の人生が「本当の幸せ」へ向かうかどうかが決まります。
この記事では、夢が叶った後に陥りやすい状態について解説し、「本当の幸せ」に出会うためのヒントをお届けします。
Contents
なぜ、念願の夢が叶った後に幸せが感じられないのか

「この夢が叶ったら、私は幸せになれるはず」そう信じて、あなたは何年も何年もひたすら努力してきました。
ずっと切望していた環境や社会的成功を、ようやくあなたは手に入れます。
それまでの苦労が報われたように感じ、毎日が輝いて見えることもあるでしょう。しばらくの間は文字通り「夢心地」で、高揚感に包まれています。
ところが嬉しかったのは、一時のこと。
あれほど望んだ夢だったのに、やがて高揚感や幸福感は消え、「なぜか満たされない」「思っていたほど幸せではない……」ある種の虚しさすら感じることがあるかもしれません。
実は、夢を実現したにもかかわらず幸福感が長続きしないという現象は、多くの人に見られます。
なぜ人は夢を叶えても、その幸せを感じ続けることができないのでしょうか。
次の章ではその理由について、心理学や脳科学の研究から明らかになっている考え方を紹介していきます。
1. 燃え尽き症候群
燃え尽き症候群とは、それまで強い意欲を持って仕事や目標に向かって走り続けていた人が、あるときを境に急激に活力を失ってしまう状態のことです。
この状態になると、強い疲労感や慢性的なだるさを感じたり、以前は達成感を得られていたことにも喜びを感じられなくなったりします。
また、人との関わりが負担に感じられ、無意識のうちに距離を置こうとすることもあります。心だけでなく身体にも影響が現れ、何をするにも気力が続かないと感じる人も少なくありません。
一般的には、医療や介護、教育、接客など、人と深く関わる仕事に携わる人に多いとされています。
また、長年にわたって大きな夢や目標を追い続けてきた人も、同じような状態に陥ることがあります。
2. ヘドニック・トレッドミル:幸せへの「慣れ」
私たちは、幸せな状態にはやがて慣れてしまいます。
心理学者のフィリップ・ブリックマン氏とドナルド・T・キャンベル氏は、幸せへの「適応」という考えを1971年に学術誌で発表しました。
最初は幸せでも、その状態に慣れるにしたがい、幸福度はやがて元の状態に戻ってしまうのです。
あなたも、「宝くじで巨額を手にした人が、その後の人生で必ずしも幸福感を感じているわけではない」という調査結果を目にしたことがあるでしょう。
ブリックマン氏とキャンベル氏は、幸せに対する人間の貪欲さを「ヘドニック・トレッドミル(幸福のまわし車)」という言葉で説明しました。
たとえば、念願のマイホームを建てたのに、しばらくすると別荘が欲しくてたまらなくなる。または、お金を貯めてブランド物のバッグを買ったけれど、次の新作バッグも欲しくなってしまう。
夢を一つ叶えるたびに、人はやがてその状態に慣れてしまう。その結果、「もっと大きな夢」を追い始めてしまう。
まるでネズミがまわし車の中で延々と走っているかのようなこの「追いかけっこ」は、一生続くとされているのです。
3. フォーカシング・イリュージョン(目指した方向が違った)
夢を叶えたのに思ったほど幸せを感じられないとしたら、その夢自体が「本当に自分が求めていた幸せ」と少し違っていたのかもしれません。
アメリカの心理学者であり、プリンストン大学名誉教授でもあったダニエル・カーネマン氏は、年収と幸福度の関係について研究を行いました。
それによると、年収7万5,000ドルまでは収入に比例して幸福度が増大しますが、7万5,000ドルを超えると比例しなくなるのだそう。
仮に1ドルを159円として計算すると、7万5,000ドルは日本円に換算して11,925,000円。およそ1,200万円です。
しかしカーネマン氏が指摘しているポイントは金額ではなく、人間の特性です。
私たちは、「お金が増えれば幸せになれる」と思うことがあります。しかし実際には、お金を手に入れても期待していたほどの幸福感が続かないことが多いです。
人はそれらを過大評価してしまい、間違ったところに焦点を当ててしまう。
カーネマン氏は、このような人間の思い込みを「フォーカシング・イリュージョン(焦点の錯覚)」と呼びました。
夢が叶った後こそ知りたい「本当の幸せ」の正体
心理学や幸福学の研究では、「幸せ」には2種類あるとされています。
一つは、何かを達成したり手に入れたりすることで得られる「条件付きの幸せ(Doing)」です。
そしてもう一つは、外側の環境に左右されず、「今、この瞬間の心の状態が満たされている」ことで感じる「在り方の幸せ(Being)」です。
夢が叶った後にもし「虚しさ」を感じるのであれば、それは「『外側の条件』をこれ以上集めても、私の心はもう満たされない」というサインかもしれません。
「幸せ」の種類については、このコラムの過去記事で詳しく説明しています。ぜひ読んでくださいね。
私、大鈴佳花が「夢が叶った後」に見つけたもの
私はいま、幸せを生きています。でも、かつての私は、幸せを探し続けていました。
ここでは、私がどのようにして「幸せ」を見つけていったのか、その過程をお伝えしますね。
お金持ちになれば幸せになれる
20代のころの私は、「お金持ちになれば幸せになれる」と信じていました。当時は営業職をしていて、休日も仕事のことを考え、成果を上げるための努力をしていました。
その結果、何年もの間、社内トップの売上をキープすることができ、見事にお金持ちになり、憧れの暮らしを手に入れたのです。
東京の一等地に住み、クローゼットにはブランドの洋服が並び、棚には高価なバッグがずらりと並ぶ。
周りから見れば華やかな生活だったかもしれません。でも、仕事に追われ、人との約束に追われ、気づけば時間にも追われていた。
仕事の帰り道、高層ビルの間から空を見上げながら、思っていました。「私はいつになったら自由になれるんだろう……」。
見上げた空は遠い世界のようで、どれだけ手を伸ばしても、その青さには届かない気がしたのです。
お金の次に求めたものは、自由だった
十分なお金が貯まったとき私は、「自由に生きよう」と決めました。
仕事を辞めた帰り道、私は晴れやかな気持ちでした。「これが、ずっと欲しかった自由なんだ!」と。
それからは、スキューバダイビングをしたり、友人と気ままに旅行に出かけたり、平日の昼間にカフェでゆっくりしたり。
しかし、1年が過ぎたころ……その輝きは、少しずつ色を失い始めました。朝起きても、やることがない。どこか空っぽ。
そんなある日のこと、ダイビング中に事故を起こし、私はPTSDを発症してしまったのです。
海を見ると過呼吸になるその症状は、6年も続きました。自由を手に入れた私は、今度は「心の自由」を失ったのです。
人生の流れを根こそぎ変える出来事
ようやくPTSDが治り、2011年から私は、セミナー講師の仕事を始めました。そんな矢先の2013年、それまでの人生の流れを根こそぎ変える出来事が起こったのです。
カイロプラクティックの施術ミスで頸椎を損傷し、私は突然、約1年もの間、ほぼ寝たきりになってしまったのです。
ベッドで横になり、天井をただ眺め、当たり前のことすらできない毎日。そのとき、私は初めて本気で「幸せとは何か」を考えたのでした。
そして来る日も来る日もひたすら自分と向き合い続け、ようやく気づくことができたのです。
私はこれまで、「外側の条件」を集めることに人生を使っていた。でもそこに、私の「本当の幸せ」はなかったのだと。
セミナー講師という仕事が、使命へと変わった
寝たきりの生活からやっとの思いで回復した私は、再びセミナー講師として活動を始めました。
誰かの人生を変えたいからではなく、もっと根源的な理由です。
「私は、自分の命を使って生きたい。そして、その生き方を伝えることが、私の使命だ」
そのとき、セミナー講師という仕事は、私にとって「職業」ではなく「生き方」に変わったのでした。
あなたが叶えた夢は間違っていない。夢を叶える「プロセス」の中にあるものとは
ここまで読んで、「じゃあ、私がこれまで追いかけてきた夢は間違いだったの?」「がんばって手に入れたものに意味はなかったの?」そんな気持ちになった人もいるかもしれません。
でも、私が言いたいのはそうじゃないんです。
思い出してみてください。
あなたは夢を叶えるために、たくさんのことを学び、考え、行動してきましたよね。ときには不安を抱えながらも前へ進んできました。
一人では乗り越えられない壁にぶつかり、誰かの助けを借りたこともあったでしょう。自分が誰かを支えながら進んだこともあったかもしれません。
そんな日々の中で、あなたは知らないうちに成長していたのです。
もし本当に幸せがお金や地位や物だけで決まるのなら、それを手に入れた瞬間に人生は完成するはずです。でも、現実はそうじゃない。
新しいことに挑戦するときの胸が高鳴る感覚。できなかったことができるようになったときの達成感。仲間と力を合わせて一つの目標に向かう喜び。
そうした中に、たくさんの幸せが隠れているのです。
だから私は、「幸せ」とは、チャレンジすることそのものだと思っています。なぜなら人は、成長したときに大きな喜びを感じるものだから。
夢はどんどん叶えていい。次の夢を叶えるあなたが手にするもの
あなたはこれまで、夢を追いかける中で数え切れないほどの経験を積み、たくさんの成長をしてきたと思います。
最初は「これさえ手に入れば幸せになれる」と思っていたものも、実際に手に入れてみると以前ほど大きな喜びを感じなくなることがあります。
以前のあなたが憧れていたものと、いまのあなたが求めるものは違っていて当然です。なぜなら人は、成長すれば価値観が変わり、見える景色も変わっていくからです。
夢が叶った後に新しい夢が生まれるのは、自分自身が前へ進み続けている証。
だから私は、夢は遠慮せずにどんどん叶えていけばいいと思っています。
しかし、夢を次から次へと叶えることで「ヘドニック・トレッドミル」に乗り続けることをおすすめしているのではないですよ。
夢を叶えることそのものが目的なのではなく、その過程で得られる学びや挑戦、そして成長にこそ本当の価値があるからです。
もしいま、あなたの心の中に「こんなことをやってみたい」「こんな人生を生きてみたい!」という想いがあるなら、その気持ちを大切にしてください。
そして、その夢に向かって一歩を踏み出してみましょう。きっとその道のりそのものが、人生を輝かせてくれるでしょう。
まとめ
夢を叶えた後に感じる「虚しさ」は、脳の「錯覚」や幸福への慣れが引き起こすものです。
それは、あなたの幸せの概念がシフトするサインかもしれません。
これからもたくさんの夢を叶えながら、その道のりにある「本当の幸せ」に出会ってくださいね。
あなたの輝く未来が叶いますように、私はいつも応援しています。
参考文献(WEB)
厚生労働省 こころの耳「燃え尽き症候群」
久保 真人「バーンアウト (燃え尽き症候群)ヒューマンサービス職のストレス」
独立行政法人経済産業研究所「行動経済学の光と影 期待過剰は信頼失墜もたらす」
参考書籍
髙橋聡美(2012)『グリーフケア』メヂカルフレンド社
ダニエル・ネトル(2020)、金森重樹監修、山岡万里子訳『幸福の意外な正体―なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか』きずな出版
前野隆司(2013)『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』講談社
大鈴佳花(2021)『私はただ、「生きてる~!」って叫びたいだけだったんだ』サンマーク出版






