しあわせのレシピ

【幸せの定義】本当の「幸せ」とは?人類が2000年追い求めた幸福論にみるヒント

こんにちは、大鈴佳花(おおすず・よしか)です。

仕事や私生活で目標を達成したはずなのに、しばらく経つとまた「何かが足りない」と焦ってしまう。

「どうしたら、幸せになれるのだろう?」「そもそも、幸せの定義ってなに?」

あなたが今、このように考えているなら、あなたが持っている「幸せの定義」を見直すタイミングかもしれません。

そこでこの記事では、古代ギリシャの哲学から現代心理学、さらにブータン王国の国策まで、人類が探求してきた「幸せの定義」について解説します。

あなたにとっての「本当の幸せ」を育てるヒントをぜひ、見つけてくださいね。

 

古代ギリシャから現代まで。人類の永遠の問い「幸せとは何か」

「幸せってなんだろう?」と考えることって、ありませんか?

有名企業に就職できた。マイホームも建てることができた。お金を貯めて、高級ブランドのバッグを買った。海外旅行に、年に1〜2回行けるようになった。

かつての自分が「これができたら幸せ」と思っていたことを叶えたはずなのに、その幸せは思ったより短く、気づけばまた「何かが足りない」という感覚に襲われる。

そんなとき、「もしかして、私が思う『幸せ』の定義が間違っていたのかな?」と考えてしまうものです。

「本当の幸せとは何か」を知って、今度こそ「間違いのない幸せ」を目指したい。実は、同じように考えた人たちは昔からたくさんいました。

「幸せとは何か」という問いは、古代ギリシャの哲学者たちが2,000年以上前から考え続けてきたテーマであり、現代の私たちもなお追い求め続けている永遠のテーマなのです。

「絶対的な定義」は存在しない。主観的で広大な「幸福」の世界

結論から言えば、人類が何千年も「幸せとは何か」を探し続けてきたにもかかわらず、いまだにひとつの絶対的な定義は見つかっていません。

なぜなら幸せとは「主観」であり、人によってまったく違うものだからです。

そのため「幸せ」という言葉には、驚くほど広い意味が含まれています。誰かにとっての幸せが、別の誰かにとってはそうではない。それが当たり前なのです。


たとえば、仕事で高い収入を得ることに幸せを感じる人もいれば、ボランティア活動を通して誰かの役に立つことに喜びを感じる人もいます。

このように幸せの形は人それぞれですが、それでも多くの人が「幸せの本質」を知ろうとしてきました。

実際、「幸せ」についての研究や哲学、心理学の議論は数えきれないほど存在します。
そこでここでは、その中でもよく知られている代表的な考え方をいくつか紹介していきますね。

西洋哲学における二大概念:「幸福主義」と「快楽主義」

西洋哲学では「幸せ」をどう捉えるかについて、大きく2つの考え方があります。

それは「幸福主義」と「快楽主義」です。

アリストテレスが唱えた「幸福主義」:現代に受け継がれる「能力を発揮する幸せ」

幸福主義(Eudaimonism:エウダイモニズム)は、古代ギリシャで生まれた「本当の幸せとは何か」を考える思想です。

この言葉のもとになっているのが、エウダイモニア(Eudaimonia)という概念です。

哲学者アリストテレスはこれを 「人間にとって最高の善」 と捉え、人生でもっとも追い求めるべきものだと考えました。

エウダイモニアにはさまざまな解釈がありますが、一つの言い方をすると、幸福とは「快楽」や「一時的に感じる幸福感」ではなく、「徳を実践し、自分の能力を最大限に発揮することで達成される状態」であるとする考え方です。

この考え方は現代にも受け継がれていて、幸福度を測る指標として多くの公的機関が取り入れています。


たとえば日本の内閣府は、生活の質や満足度を調査する際に、エウダイモニアを「人生の充実感」という言葉で表し、幸福度を測る考え方のひとつにしています。

ただ、ここで本当に伝えたいのは難しい定義ではないのです。

すでに古代ギリシャ時代から、幸せは、お金や名声といった外側のものではなく、「生きる姿勢」の中にあると結論づけられていたということです。

エピクロスが唱えた「快楽主義」:苦痛を遠ざけ「価値ある快楽」を求める幸せ

快楽主義(Hedonism:ヘドニズム)は、いろいろな解釈がありますが、基本的には「人生の究極的な目標は『快楽』を大切にすること」という考え方です。

快楽主義の原則には、「快楽を最大限に追求する」ことだけでなく「苦痛を最小限に抑える」ことも含まれています。

ただし、快楽主義の創始者とされる古代ギリシャの哲学者エピクロスは、「快楽に走れ」と主張したわけではありません。

彼が言ったのは、「幸福を求めることこそが、価値ある快楽である」ということ。

つまり、目先の刺激ではなく、心が満たされる「質の高い快楽」を大切にするという考え方です。

英語における2つの「幸せ」:「happiness(ハピネス)」と「well-being(ウェルビーイング)」

英語で「幸せ」を表す言葉には、happiness(ハピネス)と well-being(ウェルビーイング) の2つがあります。

「well-being」と聞くと「健康」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、実はもっと広い意味を持っています。

身体だけでなく、精神的、社会的など「人生全体が良い状態」であることを指す言葉です。最近の日本では「幸せ」「幸福」という意味でもよく使われるようになりました。

一方で、日本の幸福学の第一人者・慶應義塾大学の前野隆司(まえのたかし)教授は、happiness は「楽しい」「嬉しい」などの短期的な感情を表す言葉だと説明しています。

そのため、より長期的で深い満足を示す well-being と区別して使っています。

well-beingの5つの領域「PERMAモデル」


心理学において「幸せ」を扱っている学問に「ポジティブ心理学」があります。

ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン博士は、「well-being(ウェルビーイング)が持続的に高い状態」になるための5つの領域「PERMAモデル」を提唱しました。


「PERMAモデル」とは、以下の5つの領域の頭文字をとった名称です

  1.  P:Positive Emotion(ポジティブ・エモーション:ポジティブ感情)
  2.  E:Engagement(エンゲージメント:物事への積極的なかかわり)
  3.  R:Relationships(リレーションシップ:他者とのいい関係)
  4.  M:Meaning(ミーニング:人生の意味や意義の自覚)
  5.  A:Accomplishment(アコンプリッシュメント:達成)

このPERMAモデルには、自分の幸福度を測るための心理検査があります。

「幸せ」という目に見えない感覚を、具体的に分けて確認することで、自分がどのような状態にあるのかを客観的に見つめることができるのです。

「幸せ」を目標に掲げた国、ブータン王国

世界には、国の目標として「幸せ」を掲げている国があります。その代表が、ヒマラヤ山脈の南にあるブータン王国です。

ブータンは憲法の中で 「国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)」 という考え方を大切にしています。

1970年代、多くの国が「国民総生産(GNP)」=お金や経済成長を国の目標にしていた時代に、当時のブータン国王ジグメ・センゲ・ワンチュクはこう考えました。

「本当に大切なのは、モノの豊かさより『幸せ』だ」そして、国の中心となる理念を「GNH」に切り替えたのです。

それ以来、ブータンではすべての政策が 「国民の幸せにつながるかどうか」を基準に作られています。

「幸せ」は測定可能か?ブータン王国の「幸せ」の定義

「でも、幸せってどうやって測るの?」そんな疑問が浮かんできますよね。

幸せを測るということは、まず「幸せとは何か」という定義が必要になります。


ブータンの「国民総幸福量(GNH)」には、そのための基準として 4つの柱・9つの領域・33の尺度 があります。

まず、GNHの「4つの柱」は次のとおりです。

  1. 持続可能な開発の促進
  2. 文化的価値の保存と促進
  3. 自然環境の保全
  4. 良い統治の確立

一見すると「経済」が入っていないように見えますが、ブータンが経済を軽視しているわけではありません。

経済的な豊かさは 「持続可能な開発」 の中に含まれています。


さらに、GNHは次の 9つの領域 に細かく分けられています。

「心理的幸福」「時間の使い方とバランス」「文化の多様性」「地域の活力」「環境の多様性」「良い統治」「健康」「教育」「生活水準」。


そしてこれらを、さらに 33の尺度 に細分化して評価します。

では、どうやって測っているのか。

ブータンでは 王立ブータン研究所が5年に一度、全国規模の「幸福度調査」 を行い、各世代の人々に直接アンケートを取っています。

つまり、国全体で「幸せ」を丁寧に見える化しているのです。

ブータンから日本へ。日本版「総幸福量」を目指す試み

少し余談になりますが、ブータンのように「幸福度」を国の指標として掲げる動きは、世界のあちこちに広がっています。

日本でもその流れはあります。

たとえば東京都荒川区では「GAH(Gross Arakawa Happiness:荒川区民総幸福度)」という独自の指標を作り、区民の幸せを高めるための取り組みを進めています。

また、「住みやすい街」として知られる静岡県浜松市でも、2013年に市民を対象とした幸福度調査を実施しました。

その結果、「GHH(Gross Hamamatsu Happiness:浜松総幸福量)」は63% という数字が出ています。

つまり、ブータンだけでなく、日本の自治体でも「経済だけでは測れない幸せ」を大切にしようという動きが確実に広がっているのですね。

夢を叶えた後に寂しさを感じても、あなたの「幸せの定義」は間違っていない

ここまで、人類がどんなふうに「幸せ」を定義しようとしてきたのかを見てきました。

そして、幸せを考えるうえで知っておくとラクになるポイントがひとつあります。それは、人間には「幸せに慣れてしまう」性質があるということです。

これは、人が新しい環境に順応する力を持っているからだと言われています。

たとえば、収入が上がったときは大きな喜びを感じますよね。でもしばらくすると、その状態が当たり前になり、また次の収入を求めたくなる。

こうした現象は、多くの人が経験しているはずです。

つまり、もしあなたが夢を叶えたあとに「思ったほど幸せを感じない」としても、それはあなたの「幸せの定義」が間違っていたわけではありません。

人は幸せに順応する生き物。

そのことを知っていれば、これから先も「自分にとっての幸せ」を一つひとつ遠慮なく叶えていけるはずですよ。

まとめ

幸せの定義は、人によって本当にさまざまです。でもひとつだけ言えるのは、「自分が選んだ幸せを生きることが大事」だということ。

つまり、誰かが決めた価値観や「こうあるべき」に合わせるのではなく、自分が心から「これが幸せだ」と思える生き方を選ぶこと。

そのことさえ忘れなければ、あなたはきっと、自分の幸せを叶えていけるはずです。

あなたの輝く未来が叶いますように、私はいつも応援しています。

 

参考文献
草津市「第2章 幸福度の定義」
第一ライフ資産運用経済研究所「【1分解説】ユーダイモニアとは?」
内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2025 概要」
石田雄樹「レチフ・ド・ラ・ブルトンヌにおける快楽主義と幸福主義の変遺『ムッシュー・ニコラ~,初期作品, ~奇論集』の分析-」
前野隆司(慶応義塾大学)「ウェルビーイングとは何か?」
喜多島 知穂、飛鳥井 正道、末吉 隆彦、磯崎 隆司、前野 隆司「主観的ウェルビーイングの分析と構造化」
JICA(独立行政法人国際協力機構)「第2章 ブータン国の概要」
外務省「ブータン王国」
在東京ブータン王国名誉総領事館「国民総幸福量(GNH)」
RILAC 荒川区自治総合研究所「GAH指標をつくりました」
浜松市「浜松市PRブック『HAMA流』第9号」

 

参考書籍
此本臣吾・監修、森健・編著(2020)『デジタル国富論』東洋経済新報社
筒井義郎・佐々木俊一郎・山根承子・グレッグ・マルデワ(2017)『行動経済学入門』東洋経済新報社
橘木俊詔・高松里江(2018)『幸福感の統計分析』岩波書店
樺沢紫苑(2021)『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』飛鳥新社
前野隆司(2013)『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』講談社
藤永保(2013)『最新 心理学事典』平凡社