しあわせのレシピ

習慣化するには?要する時間や習慣付けのコツ、悪習をやめる方法も説明します

こんにちは、大鈴佳花(おおすず・よしか)です。

あなたは「習慣化」と聞いて、どのようなイメージを持っていますか。

習慣化しようとしてもうまくいかなかった経験を持つ人は、習慣化という言葉に苦手意識があったり、自分は意思が弱いから無理だと思っているかもしれません。

しかし、新しい行動を習慣付けるのに、意思の強さや根性は必要なく、脳の仕組みに沿ったコツがあるのです。

そこでこの記事では、習慣化の仕組みやコツについてお伝えします。

習慣化とは

「習慣化された状態」とは、ある行動をなかば無意識で行う状態のことです。

車を運転する人は、「シートベルトをしなければ」と、とくに考えることなく「車のドアを開け、運転席に座る」という動作の流れでシートベルトを装着します。

これは、シートベルトをするという行為が習慣化されているからです

(参考:加藤俊徳・著「センスは脳で磨かれる」(クロスメディア・パブリッシング(インプレス)・2021年))

(参考:山田泰壮・著「30分でわかる!フロイト、ユング、アドラーの心理学」(マネジメント社・2022年))

習慣化の仕組み

脳の神経細胞は、互いに情報の信号をやり取りして、巨大なネットワークを作っています。

神経細胞が情報を伝達する結合部は、シナプスと呼ばれています。


ある実験で新しい運動をマウスにさせたところ、初期の数日間に新しいシナプス結合がたくさんできていました。

日が経つと新しくできたシナプス結合の多くは消えていたそうですが、残っているシナプス結合の多くは、信号が強化されているとわかりました。


つまり、
脳は学習の初期に様々なやり方を試し、使える神経回路が判明すると、それだけを残してその回路を強化すると考えられています。

脳ができあがった神経回路だけを使って、最小限の労力で対処できる状態が「習慣化された状態」と言えるでしょう。

(参考:大学共同利用機関法人自然科学研究機構生理学研究所「学んだ」ことが「身につく」ときの脳の変化〜運動学習で大脳皮質神経回路が変化し学習記憶が進む〜)

(参考:加藤俊徳・著「センスは脳で磨かれる」(クロスメディア・パブリッシング(インプレス)・2021年))

習慣化できない人には特徴がある

あなたもこれまできっと、いろいろなことを「習慣化しよう!」とチャレンジしてきたと思います。

でも、行動が続かず、挫折した経験が何度もありませんか?

たとえば、ダイエットをする、英語を勉強する、運動をする、外食やお惣菜を買うのを減らしてなるべく自炊するなど。

実は習慣化がうまくできない人には、特徴があるのです。それは意思の力や根性だけで習慣化を達成しようとすることです。

また、習慣化に失敗したときに「私はなんて意思が弱いんだろう」と自分を責めてしまうことも、習慣化がうまくできない人によく見られる特徴の一つです。

でも実は、習慣化には意思の強さも根性も関係ないとされています。そう聞くと、ちょっとホッとしませんか?

習慣化を成功させるには、人間の脳の仕組みに沿って行動を変えればいい。

つまり、習慣化にも計画が必要なんですね。

習慣付けのプロセス

習慣化するために計画を立てる上で参考になることがあります。

それは、行動科学の分野で提唱され、保健指導に導入されている「行動変容のステージ」という理論。

行動変容のステージは、多理論統合モデルという理論の中の概念の一つです。

健康行動の変容理論はたくさんありますが、それらの中でも多理論統合モデルは、禁煙や運動習慣の獲得などの成功率が最も高いアプローチの一つだと認められています。

禁煙や運動は、なかなか成功できない人が多いですよね。

ぜひ、参考にしてくださいね!

(参考:行動変容ステージ)

(参考:「多理論統合モデル(変化ステージモデル)・総論」P181「4、」)

「行動変容ステージ」モデルの5段階

まず、人間の心理の変化を知っておいてください。実は多くの人が、共通のプロセスをたどるとされています。

行動変容ステージ」モデルでは、人が行動を変えるとき、以下の5つのステージをたどると考えられています。

  • 1.無関心期
  • 2.関心期
  • 3.準備期
  • 4.実行期
  • 5.維持期

(参考:「多理論統合モデル(変化ステージモデル)・総論」P181「4、」)

1.無関心期

「行動を変える」ことについて無関心である時期。周囲の人が問題を指摘しても、本人は問題だとは認識していない、または認めたくない状態にある段階です。

(参考:小島亜未、加藤佳子「行動変容ステージ」)

(参考:松本俊彦、佐久間寛之、蒲牛裕司・編・著者「やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド」(文光堂・2021年)P27)

2.関心期

まだ実行していないが「6か月以内に行動を変えよう」と考えている時期。

この時期は「両価性」を持つ時期だとされています。両価性とは、相反する気持ちを同時に抱くことをいいます。

たとえばダイエットしているとき、「痩せたいけれど、お菓子は食べたい!」と思うことってありますよね?このような両極端な思考はどちらも本音で、誰もが抱くものです。

この時期には、「変わりたい」気持ちと「このままでいたい」気持ちの両方が存在します。

行動を変えた方がいいのはわかっているけれど、いますぐとは思っていない心理状態にある段階です。

(参考:小島亜未、加藤佳子「行動変容ステージ」)

(参考:松本俊彦、佐久間寛之、蒲牛裕司・編・著者「やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド」(文光堂・2021年)P28)

3.準備期

まだ実行していないが、「1か月以内に行動を変えよう」と考えている時期。行動を変える決心はついたけれど、まだ行動に移せていない段階です。

また、行動を変えるための具体的な方法を探している段階でもあります。

(参考:小島亜未、加藤佳子「行動変容ステージ」)

(参考:松本俊彦、佐久間寛之、蒲牛裕司・編・著者「やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド」(文光堂・2021年)P28)

4.実行期

行動を変えて、1か月未満である時期。行動を変えることのメリットを感じ始めます。

しかし、成果が見えにくい場合はストレスを感じるため、ステージを逆戻りしやすい時期でもあります。

(参考:小島亜未、加藤佳子「行動変容ステージ」)

(参考:松本俊彦、佐久間寛之、蒲牛裕司・編・著者「やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド」(文光堂・2021年)P29)

5.維持期

行動を変えて6か月以上経っている時期。行動は明確に変わっており、「その状態を続けられる」という自信がある段階です。

(参考:小島亜未、加藤佳子「行動変容ステージ」)

(参考:松本俊彦、佐久間寛之、蒲牛裕司・編・著者「やってみたくなるアディクション診療・支援ガイド」(文光堂・2021年)P29)

(参考:日本保健医療行動科学学会雑誌 津田彰、石橋香津代「行動変容」)

行動変容の過程で起こること

「行動変容のステージ」モデルでは、「行動は、各段階を行ったり来たりしながら変化していく」とされます。

行動がスムーズに変化していくことは、むしろ珍しく、いったん行動が変わっても段階を後戻りすることもよくあるんですね。

その理由は、「両価性」。

人の心は「変わりたい気持ち」と、「このままでいたい気持ち」の間を揺れるものだからです。

両価性は「実行期」にもみられることがあり、このままでいたい気持ちが強い場合などは、せっかく変えた行動をやめてしまうことがあります。

そのため、気持ちの揺らぎがあるとあらかじめ知っておき、気持ちが揺らいだときの対策を準備しておけるといいですね。


(参考:小島亜未、加藤佳子「行動変容ステージ」)

習慣化に必要な期間は?

「行動変容ステージ」モデルでは、「維持期」が行動を変えて6か月以上経っている時期と定義されています。

でも「習慣化するには、21日間日間継続すればいい」と聞いたこともある人も、きっとたくさんいますよね。

また「66日説」を知っている人もいるかもしれません。

この数字はある研究で、参加者の習慣化までにかかった期間に18日〜254日と幅があり、その中央値をとって「66日」と報告されたことに由来します。


実際には習慣化するまでの期間は、個人差が大きいとされています。

また習慣化しようとしている行動の難易度によっても異なります。

そのため、習慣化させたい場合は、少なくとも21日間は続けることが必要だと言えそうです。

その次は2か月程度、その次は6か月と、徐々に目標を伸ばしていくといいでしょう。

(参考:島崎祟史「習慣形成の健康心理学」)

(参考:Phillippa Lally「How are habits formed: Modelling habit formation in the real world」)

習慣化のコツ

習慣化には、「行動」が必要だと言いました。

でも、習慣付けの方法に「絶対の正解」はないんです。だから自分に合う方法をみつけて計画を立てることが大切です。

それでも習慣化には、いくつかのコツがあります。ここでは「習慣付けをするためのコツ」を紹介していきますね。

「小さな行動」からはじめる

実行するのが簡単な行動ほど、習慣化しやすいとされています。そのため、習慣化したい行動を「小さな行動」のレベルまで分解するといいです。

たとえば「英語を勉強すること」を習慣化したい場合、最初の「小さな行動」は「英語を勉強する方法をインターネットで検索する」ことかもしれません。

次に「英語の勉強について本を読む」「英語の先生をインターネットで探してみる」など、行動を少しずつ「本来、習慣化したい行動」に近づけていきます。

「小さな行動」のポイントは?

「小さな行動」から「習慣化したい行動」へと行動を大きくしていくときのポイントは、行動の難易度をすぐに上げないことです。

まの自分にはこれなら簡単にできる!と思えることを実行しましょう。

また、人には両価性があり「行動変容では各ステージを行き来しながら変化していく」のでしたね。

つまり、英語を勉強する気になれない日があっても、自分を責める必要はないんです。その日は英語のテキストを手に取って、めくるだけでもいいんですよ。

褒める

行動学者BJ・フォッグ氏は著書「習慣超大全」の中で、「私は独自の研究を深める中で、習慣はその行動に『強いポジティブな感情』がともなっていれば、ごく短期間で、多くの場合わずか数日で形成されることを突き止めた」と言っています。

ポジティブな体験をすると、脳内でドーパミンという神経伝達物質が分泌されます。ドーパミンは快楽や多幸感をもたらす物質です。

人や動物にとって、「楽しい」「美味しい」などのポジティブな感情は報酬なので、もっと報酬が得られるように行動を変化させることがわかっています。

つまり、習慣化させたい行動を定着させるために、意識的にポジティブな感情を作り出すといいのです。

好きな食べ物を食べるなど、さまざまなタイプのポジティブなものがありますが、一番簡単なのは「自分を褒めること」です。

行動したら脳にポジティブな気持ちを伝えるために、自分を褒めてあげてください。


また、このときのポイントは、報酬
を与えるタイミングです。

「行動」と「報酬(ポジティブな気持ち)」が結びつくように、行動の直後に自分を褒めることが大切になりますよ!

(参考:河西春朗「ドーパミンによる報酬作用の脳内における仕組み」)

大鈴佳花の習慣化の「コツ」をご紹介

私は毎日ウォーキングをしています。大雪や台風のような、よっぽど天気が悪いとき以外はどんなときも歩いています。

みんなウォーキングというと、「きちんとしたフォームで、足早に!」と思いますよね。

でも、その日の気分や体調、仕事の忙しさなど、さまざまな要因で毎日同じように歩くことは大変です。

だから私は合格ラインを低くして、「15分のんびり散歩」もウォーキングとしています。


また、ウォーキングするときは「さぁ、冒険に行こう!」と玄関ドアを開けるときに元気に声に出して言っています。これだけで、気分がすっごく上がるんですよね!

そして私の頭の中には、映画「インディージョーンズ」の主題歌が軽快に流れ始めるのです。

曲に合わせて一歩外に足を踏み出せば、見慣れた近所の景色が色鮮やかによみがえる。そこはまるで別世界。そう、「私の冒険」の始まりです。

すると「あ、こんなところに米粉のケーキ屋さんがオープンしたわ!」とか、「おお!?ここに無農薬野菜のお店があったのか~!」など、新しい発見がたくさんあり、1時間以上ウォーキングしていることもしばしばあります。


私はこのように、「合格ラインを低く」して、「遊び感覚で楽しく」習慣化しているんです。なぜなら私たちの脳は、楽しいことを続けたくなるからなんですよ。

 

あきらめるのはまだ早い。三日坊主になってしまったら

「三日坊主」という言葉がある通り、ある行動を最初は継続できても、やがてやめてしまう人は多いのではないでしょうか。

でも、もし4日目に行動できなくても、5日目からまた始めればいいのです。

そこで習慣化へのチャレンジをやめてしまったら、本当に三日坊主になってしまいます。

5日目にまた再開すれば、それは「1日お休みしただけ」になりますね。 

継続のための「検証」も忘れずに

ただし、いったんお休みして再開するときは、「なぜ続かなかったのか」という原因を見つけておくことで、また続かなくなることを防ぐことができます。

「この行動計画は、いまの自分には難しかったかな?」と思ったなら、行動をさらに小さくしてみる。

あるいは行動をとるのに、邪魔になっているものや環境があるなら、排除する。

また、「自分はなぜこの習慣を身に付けたいのか?」というそもそもの意義を思い出すと、前向きな気持ちが戻ってくるでしょう。

悪習慣をやめる方法

よくない習慣をやめたい場合も、習慣化の仕組みを利用することができます。

習慣化する場合と同じく、以下のポイントを押さえながら計画的に取り組んでみてください。

  • 望ましくない行動を「小さく」していく
  • より好ましい行動に置き換える

望ましくない行動を「小さく」していく

「行動を小さくする」ことは、ここでも有効です。

たとえば、お菓子を食べ過ぎてしまうなら、まずお菓子を食べる頻度を減らしてみる。

スマホをダラダラ見て時間を無駄にしてしまうのなら、目的なく見る時間を徐々に減らしていく。

勢いよく食べてしまって食べ過ぎるのであれば、ゆっくり食べることを意識するなど。

回数や時間を「小さく」していったり、「その行動の勢いを抑える」ことなどが有効です。


人間の心には「両価性」があります。

ある行動をいきなりやめるのではなく、行動を徐々に小さくしていくことで、「このままでいたい」という気持ちをおびやかすことなく行動を変えていけると考えられています。

(参考:BJ・フォッグ・著、須川綾子・翻訳「習慣超大全—スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法」(ダイヤモンド社・2021年)P412)

より好ましい行動に置き換える

「やめたい行動」を新しい行動に置き換える方法もあります。

このときのポイントは、「やめたい行動」よりも実行しやすく、よりモチベーションを感じるような行動で置き換えることです。

行動の置き換えに成功したら、すかさず自分を褒めて、脳の「報酬システム」を活性化させることも忘れずに行ってくださいね。

(参考:BJ・フォッグ・著、須川綾子・翻訳「習慣超大全—スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法」(ダイヤモンド社・2021年)P413~416)

まとめ

習慣付けのプロセスや習慣化に必要な期間、習慣化のコツや悪習慣をやめる方法についてお伝えしました。

人間の行動は、一定のプロセスを経て変わっていくとされています。このプロセスを知っておけば、やる気がある日もない日も、自分を責めなくていいですね!

楽しみながら習慣化していってくださいね!

あなたの輝く未来が叶いますように、私はいつも応援しています。

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